私が受講している臨書部では半年~1年で取り組む臨書課題が変わります。この3月まで、高段位の受講者を対象にした課題は、顔真卿の争坐位文稿(そうざいぶんこう)でした。(私はまだ高段位ではないので対象外でしたが(^▽^;)。)争坐位文稿については、私が持っている書道の本にも何度か出てきており、実に興味深いと思ったため、こちらで詳しくご紹介したいと思います。
「顔真卿の三稿」のひとつ 55歳の時に書かれた怒りの手紙の下書き
作者は顔真卿(がんしんけい)。709~785年。唐時代の四大家の一人です。(書道の三大家:欧陽詢、虞世南、褚遂良 +顔真卿=四大家) 剛直な性格で、生真面目で厳しく正義を貫く姿勢が、朝廷から重宝されたり、逆に反感を買うことも少なくなかったそう。最期は味方の策略から、敵の李希烈によって77歳で殺された波乱万丈の人生でした。
争坐位文稿は広徳2年(764年)、顔真卿が55歳の時の書です。争座位帖(そうざいじょう)とも呼ばれます。当時、右僕射(うぼくや)という高い立場にいた郭英乂(かくえいがい)に差し出した、抗議文の草稿です。諸官の集まりである百官集会の際、当時実権を握っていた宦官の魚朝恩(ぎょちょうおん)に対して、郭英乂はへつらってごまをすり、上座に座るように言いました。しかしこれは座位を乱して、秩序を乱すことに繋がることから、顔真卿は激しく抗議をしました。争坐位文稿は、この抗議文の下書きになります。
現在、真跡(本人が書いた本物)はなく、刻本は多々ありますが、西安碑林にある関中本が最も信頼できる優れた拓本だといわれています。
ちなみに、争坐位文稿は、祭姪文稿(さいてつぶんこう)、祭伯文稿(さいはくぶんこう)とともに「顔真卿の三稿」と呼ばれます。
↑祭姪文稿は、悲願の死を遂げた顔真卿の甥の顔季明を弔うための草稿で、こちらも悲しみの感情あふれた顔真卿の書として高い評価を得ています。
争坐位文稿の特徴 顔真卿らしい向勢の字形、文字に変化があり豪快さが感じられる
争坐位文稿に話を戻しましょう☆顔真卿の文字は、向勢(向かい合う線が外側に膨らむ書き方)で、蚕頭燕尾(さんとうえんび…起筆は蚕の頭のように丸く、はねや払いの収筆は燕の尾のように二つに裂けるように書く)なのが特徴で、この独特の書き方は「顔法」と呼ばれています。
争坐位文稿はこの顔法をおさえつつ、文字に大きな変化があるのがわかります。文字は小さかったり大きかったり、太さも色々。蔵鋒(運筆において、穂先を内側に向けて書くこと)を駆使して、ゆっくりと書かれて重厚感があるが、一気に書き上げているような豪快さも感じられます。
高校の書道の教科書「書道Ⅱ」の中で、面白い試みを見つけました。(←臨書を勉強されている人には超おススメの本。)漢字の古典を活かし漢字仮名交じりの書を学ぶ中で「争坐位文稿に基づく表現」をしてみるという内容です☆争坐位文稿の雰囲気や表現方法を押さえて、創作するのですが、これはある程度臨書してみないとなかなかレベルは高そう~。興味がある方はぜひ見てみてください(*´▽`*)♪
顔真卿の書は「一碑一面貌(いっぴいちめんぼう)」と呼ばれます。たくさんの作品がありますが、その一つ一つの雰囲気が異なることからそう呼ばれるのです。
私は臨書を本格的に学び初めてもうすぐ1年になります。今後もっと顔真卿の色々な書に触れて書いてみて、それぞれの魅力や違いを、ここでまた詳しくお伝えしていければいいなと思っています( *´艸`)!
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