現在私は臨書を学んでいます。今年春からの課題に楷書の「薦季直表」があります。パッと見て「すごく美しい」という訳ではないのですが、じわじわと良さが分かってくるようなあたたかみのある字。王義之も臨書していたというから驚きです(/ω\)!今回はそんな薦季直表の歴史や特徴などを詳しくまとめたいと思います☆
孫過庭の「書譜」では、王義之・王献之と並んで讃えられている鍾繇の書
楷書の古典というと歐陽詢の「九成宮醴泉銘」や虞世南の「孔子廟堂碑」をイメージする人が多いですが、今回紹介する鍾繇(しょうよう)の書は、その前の時代に書かれた初期の楷書で、楷書が成立する過程でとても重要な書とも言えます。そもそも楷書というのは、あらゆる字体の中で一番最後に完成したもの。楷書の古典によって「ザ・楷書」っぽい書体だったり、行書に近いものがあったりしますが、鍾繇の書く楷書は隷書に近い書になります。←『鍾繇体』と呼ばれています。鍾繇が一番高く評価されているのは楷書ですが、一般的には『三体の書(八分書、楷書、行書)』に優れていたと言われています。
ちなみに、中国書道史上重要な存在と言われる孫過庭の「書譜」に「古の書の名家に張芝(ちょうし)、鍾繇、二王がおり、みな絶妙である」と書かれています。書の歴史上外せない二王である王義之・王献之と並んで、後漢時代に草書で有名だった張芝、三国時代の鍾繇が取り上げられています(スゴイ)。
鍾繇(しょうよう)は、151~230年に生きた政治家・能書家です。真跡は一切残っていませんが、王義之も鍾繇の書を学んだとされており、臨書した法帖が残されています。
鍾繇の有名な作品として「宣示表(せんじひょう)」「薦季直表」があります。↓「宣示表」は、字の中の空間を意識したシュッとしたキレイめな印象☆
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「薦季直表」は、本文の最後に『黄初二年(221年)』と記されており、それが本当であれば鍾繇が71歳の時の作品です。本文が歴史的事実と違う点があり偽作という説もあるそうですが、昔から鍾繇の名品として伝えられています。「薦季直表」は、そのタイトル通り、魏の文帝に季直(きちょく)という人物を推薦するという内容です。「宣示表」とは印象が異なって、ふっくらしてて温かい印象を受けます(*‘∀‘)。
前述しましたが、鍾繇の真跡は残っておらず、今伝えられているのは全て後世につくられた臨書や刻本です。薦季直表が載っている集帖(しゅうじょう:名跡を集めて石や木に刻した法帖)で有名なのが、1522年の「真賞斎帖(しんしょうさいじょう)」と1747年の「三希堂法帖(さんきどうほうじょう)」です。
薦季直表の特徴…横広で扁平、素朴な字 実際はとても小さい書
薦季直表は、縦12.12cm×横38.48cmの小さい楷書の作品=「小楷」です。全19行で、1行につき10~12字が書かれています。全体的にずんぐりと丸みがあるのが特徴で、平べったく高さはありません。本来接する部分でもくっつけて書かずに、あえて離して書くことで空間が明るくなっています。ゆったりとしたおおらかな印象です(*´ω`)。
本来とても小さな作品ですが、条幅で書くとまた奥深いです。楷書ですが、いつも書いている楷書とは確実に違う!隷書の要素があったり、篆書っぽさもある。角ばることなく、ゆったりと、でも重くなりすぎずに。ここに私が書いたものを載せようとしましたが、なかなか納得いかず…いつの日か載せますね(;・∀・)。
素朴な趣のある薦季直表は、臨書をする人は必ず押さえておきたい書のひとつでもあります。薦季直表が書かれてから今年(2021年)でちょうど1800年!!楷書の原点に立てる、そんな書に触れてみませんか(*´▽`*)?
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