「九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)」は臨書をするうえで、おそらく一番最初に出会う作品です☆「書道を学んでいるけれど、臨書を本格的に学ぶのはこれから…」という方はまず知っておくべき「九成宮醴泉銘」について簡単にご紹介したいと思います。

書の基本の”楷書” 歐陽詢76歳の時に書いた最高傑作

私は書道教室に長く通っていたものの、一般の書道教室がそうであるように特に古典に深く親しむことはありませんでした。高校に入り書道の授業を受けて最初に書いたのが「九成宮醴泉銘」でした。そして臨書を学ぶ(再?)スタートラインに立った今、私は九成宮醴泉銘にまた再開(*‘∀‘)。臨書部の課題、楷書はもちろん「九成宮醴泉銘」です

高校の時の書道の教科書★

九成宮醴泉銘は唐時代歐陽詢(おうようじゅん:557~641)によって書かれたものです。この、唐の時代に建てられた石碑の拓本は、楷書のお手本として書道を学ぶ多くの人から高く評価され臨書されています。実家で高校の時の書道の教科書を見つけたので、パラパラとみてみました。(参考:高等学校芸術家用 書道Ⅰ 東京書籍 約20年前の書道の教科書です。※現在の「書道Ⅰ・Ⅱ 」についてはこちら★)

教科書のとじ込みページは蘭亭序↑。

一部を要約しますと…楷書は5世紀の初めに成立。特に初唐の時代は書の最盛期と言われ「初頭の三大家」が生まれます。

◎歐陽詢の「九成宮醴泉銘」…鋭く切り込むような筆致、ゆとりのある空間、清らかで厳しい印象
◎虞世南(ぐせいなん)の「孔子廟堂碑」
…伸びやかな線、ゆっくりとした筆の運び、温和な姿
 ↓これらを学んで新しい境地を開拓したのが
◎褚遂良(ちょすいりょう)の「孟法師碑(こうもうしひ)」
…はぎれのよい線のさわやかさ、力のこもった温かみ、ゆとりある充実感

その後、唐の中期に登場したのが
◎顔真卿(がんしんけい)の「顔氏家廟碑」
…独特の筆法、直線による太い縦画、豊潤、力感あふれる姿
※鉛筆で書き込みしてあったので、テストに出たのでしょう(笑)。臨書、特に楷書を学ぶのであれば、この辺りは押さえておきたいところです(*^^)v

右から歐陽詢、虞世南、褚遂良、顔真卿。

ちなみに先日、初めて本屋さんで書道の専門誌『墨』を手に取りました。3・4月号は「楷書を楽しむ」が特集のテーマでしたので購入!


◎↓この本、めちゃくちゃおススメ。

楷書の名品中の名品として、やはり「九成宮醴泉銘」が大きく取り上げられていました。「楷法の極則」とうたわれるこの文字は、楷書の最も完成された姿と言われています。点画、空間、全てが綿密に工夫されているため、隙がありません。形体美に迫る方法として、写実的に臨書をするのがスタートかなと思います。

九成宮醴泉銘の特徴、押さえるべきポイント

初めて九成宮醴泉銘を臨書する人のために、そしてもっと上手く書きたいと思っている自分のために(笑)、九成宮醴泉銘を書く際に押さえておくべきポイントをまとめておきます。この特徴が魅力でもあるので、観賞するにも知っておいて損ではありません。

●一点一画を忠実に。胴体を引き締めた縦長の構えを捉える。
●横画は鋭く入筆。伏せずに右上がりぎみ。直線的に送筆。収筆の角度は45度よりも立てぎみに。
●縦画と横画は軽く接する。「不即不離」…「つかず離れず」を効果的に。離れていてもくっついて見えるように書く。
上下の組み立てのバランスを意識。「重畳法(ちょうじょうほう)」…上部を右上がりに、下部を右にずらして書き、全体のバランスを保つ。(「聖」「炎」「官」「品」など)
●文字の中心線が移動することがある。上部が左寄り、下部が右寄りになる。
●条幅など大きな作品にするなら、全体の印象を大切に。
◎知っておくべき歴史:王宮の大宮殿の離宮の一部に美しく甘い水が湧きだし、その記念に建てられたのが九成宮醴泉銘です。
未熟で恐縮ですが…臨書載せてみます(;´∀`)。

2022年6月課題より。

簡単なように見えて奥深く難しい。それが九成宮醴泉銘の最大の特徴でもあります。ここに納得ができるような作品を載せることが出来るように、私も精一杯頑張りたいと思います(*’▽’)!
◎↓お手本が欲しければ「中国法書選」、解説本が欲しければ「中国法書ガイド」。この辺りは持ってる人多いですよね(*^^)v。私も購入しました!

◎↓「九成宮醴泉銘」バージョンは持ってないんですが、「臨書を楽しむ」シリーズは本当に分かりやすいです!!

★今日のおまけ★
5歳息子と塗り絵。私も本気出した。