今回紹介するのは、草書を学ぶ上で押さえておきたい古典「十七帖」です(*^^*)!書聖・王義之が書いた草書で、美しく力強い。シャープなのにやわらかな表現は、完璧に臨書するのは決して簡単ではありません。実は私が学んでいる臨書部では今年の草書課題のひとつが十七帖なのですが、対象は五段から七段の人まで…。私はまだまだその段階まで到達していないので書いてはいないのですが、毎月届く十七帖のお手本を見ていたら、ここで紹介したくなりまとめてみました(*´▽`*) もう少し臨書に慣れて上達したら書いてみたい古典です!!
(上の写真は、高校の教科書「書道Ⅱ」からお借りしました☆)
王義之の手紙29通を一冊にまとめたもので「書中の龍」と呼ばれる
十七帖は、東晋時代に活躍した王義之(303~361)が晩年に書いた尺牘をまとめたものです。※尺牘(せきとく)…一尺の木簡=手紙のこと。手紙は29帖あり、冒頭「十七」で始まることからこの名前で呼ばれるようになりました。王義之は、蜀にいた軍人の周撫(しゅうぶ)と仲が良く、十七帖では彼にあてた手紙が多くあります。残念ながら王義之の真蹟(筆跡)は全部失っており、十七帖も同様です(>_<)。唐代のものとされる原跡も現存しておらず、後に書を学ぶ人たちは、臨書されたものや刻帖(古人の筆跡を手本などにするため薄紙にうつし、石や木に刻み、拓本にとって折本にしたもの)、文献などを元に王義之の書を再現しようとしました(ではなく、しています?現在進行形でもありますね)。
王義之の書をとても愛したことで知られるのが、太宗皇帝(598~649)。王義之の死から約300年経っていましたが、太宗皇帝は彼の書をかき集めます。書の古典の中で一番の名品と言われる「蘭亭序(らんていじょ)」と同じく、褚遂良などの能筆家によって複製を作らせて、弘文館(太宗皇帝が作った書道を学べる施設)の子弟に手本として与えました。この時作られたものは、今に伝わる十七帖の中でも最高のものと言われています。十七帖の模刻本は、他にもいくつも存在します。北宋時代の蘇軾(そしょく)が書いたものや、元の趙孟頫(ちょうもうふ)、明の董其昌(とうきしょう)などが書いたものなどが有名です。
この十七帖を「書中の龍」と言い表したのは、北宋時代の黄伯思という書家(1079-1118)。著に「東観余論(とうかんよろん)」というものがあり、その中で書に関する事実や考察がまとめられていて定評があります。そこで十七帖について、「書中の龍なり」と絶賛したことでこの作品の良さが一気に広まったと言われています。
十七帖の29通の手紙の内容 親しい友人に充てた手紙が多い
1、郗司馬帖(ちしばじょう) …友人へあてた手紙
2、逸民帖(いつみんじょう) …隠遁生活に憧れる内容の手紙
このページの一番上の「書道Ⅱ」の画像は、逸民帖から抜粋しています。
3、龍保帖(りゅうほじょう) …身内を気づかう内容の手紙
4、絲布衣帖(しふいじょう) …贈り物に関する手紙
5、積雪凝寒帖(せきせつぎょうかんじょう) …知り合いへあてた手紙
6、服食帖(ふくしょくじょう) …薬の服用に関する手紙
7、知足下帖(ちそくかじょう) …親戚に充てた手紙
8、瞻近帖(せんきんじょう) …知り合いに充てた手紙
9、天鼠膏帖(てんそこうじょう) …薬の効能について質問した手紙
10、朱処仁帖(しゅしょじんじょう) …友人に充てた手紙
11 、七十帖(しちじゅうじょう) …観光をしたい旨の手紙
12、邛竹帖(きょうちくじょう) …贈り物のお礼の手紙
13、蜀都帖(しょくとじょう) …観光をしたい旨の手紙
14、塩井帖(えんせいじょう) …風物見学をしたいという旨の手紙
15、省別帖(しょうべつじょう) …消息をたずねた手紙
16、都邑帖(とゆうじょう) …知り合いの消息を知らせる手紙
17、厳君平帖(げんくんへいじょう) …名士の子孫の消息をたずねた手紙
18、胡母氏従妹帖(こぼしじゅうまいじょう) …いとこの消息を知らせる手紙
19、児女帖(じじょじょう) …義之一家についての手紙
20、誰周帖(しょうしゅうじょう) …高尚な人の消息をたずねた手紙
21、漢時帖(かんじじょう) …絵の模写を依頼した手紙
22、諸従帖(しょじゅうじょう) …王家の出来事をまとめた手紙
23、成都城池帖(せいとじょうちじょう) …古城の歴史についてたずねた手紙
24、施罽帖(せんけいじょう) …薬の服用に関する手紙
25、薬草帖(やくそうじょう) …薬草を送るという旨の手紙
26、来禽帖(らいきんじょう) …植物のタネの保存法に関する手紙
27、胡桃帖(ことうじょう) …果樹栽培に関する手紙
28、清晏帖(せいあんじょう) …観光をしたいという旨の手紙
29、虞安吉帖(ぐあんきつじょう) …就職を依頼する手紙
十七帖の特徴と魅力・楽しみ方
十七帖に限ったことではないのですが、真蹟が残っていない名品と言われる古典はたーくさんの模写や臨書が伝わり、そこから本物の字はどうだったのか想像しながらその特徴を学んでいきます。ですので、解説本などによって解釈が少し違ったり、雰囲気が異なることもあります。それを知るのもまた楽しいものです◎
いずれにしても、十七帖は草書の魅力が詰まった作品なのは確かです!!草書を学んだことが無い人にとっては、その流れるような用筆を真似することは少し難しいです。なめらかで迷いが無く、力強い。バランスがとりづらい文字も、絶妙に整っています。力の入れ具合が統一されていて、強弱はあまり感じられません。線はもちろん、余白がとても計算されています。
王義之についてはまた別の記事で色々まとめていきたいと思うのですが、楷書も行書も草書もとにかく上手で、王義之が書いた色んな書体や作品を見比べてみるのも良いです☆以前、行書の「集王聖教序」についても紹介しましたが(そして度々書いていますが)、古典が書かれた背景や歴史を知って、実際に書いてみることで更に理解度が深まると思っています( *´艸`) もう少し実力を付けたら、十七帖もちゃんと臨書したいなぁ♪
◎↓十七帖を学ぶ上でお勧めのものをいくつか載せておきます(*´▽`*)◎