最近、鄭羲下碑の練習をしています(^^)。鄭道昭が書いた北魏時代の摩崖で、隷書の要素を感じられる楷書です。父を想う鄭道昭の気持ちが伝わってくるような、おおらかで素朴な魅力ある書体は、臨書を学ぶ人は一度は見たことがある書だと思います。鄭羲下碑について、歴史や特徴などをまとめてみました☆
父への尊敬の念を込めて雲峰山に刻んだ摩崖(まがい)
鄭羲下碑(ていぎかひ)は北魏時代、永平4年(511年)に書かれた楷書です。作者は、断定はできないそうですが、鄭道昭(ていどうしょう)(~516年)によるものだと伝えられています。鄭道昭の父は、鄭羲(ていぎ)。皇族と婚姻関係を結び権力を得ていましたが、評判は良くなかったよう。子の鄭道昭は名門の子として育ちましたが、誠実で真面目。晩年に光州(山東)の刺史(地方長官)に就くと、その地の山々を深く好み、散策をしながら良い石を見つけると文字を刻させたそうです。
ある時、鄭道昭は天柱山の中腹に高さ480センチくらいの大きな石を見つけます。鄭道昭は(悪評もあったのに)尊敬していた父・鄭羲の業績を碑文に。ただ天柱山の石は質が良くなかったため、改めて雲峰山のふもとの石に掘りなおしました。
最初に天柱山に刻したものを「鄭羲上碑」と呼び、後に雲峰山に刻したものを「鄭羲下碑」と言い、後者の方が有名です。ちなみに「鄭羲下碑」の別名は「鄭文公下碑」。父・鄭羲のおくりな(死後の名)は「文霊」といったのですが、「霊」には愚かな人という意味がありました。父を敬う心を持つ鄭道昭は「鄭文霊公下碑」ではなく、「霊」を書かずに「鄭文公下碑」としたといわれています。
鄭羲下碑の特徴 丸みを帯びた、伸びやかで素朴な書
鄭羲下碑は摩崖。自然の岩壁に刻し書かれたものです。線は波打ち、味のある表現が一番の特徴です。北魏時代の楷書というと龍門石窟の書が有名ですが(参考:龍門石窟のひとつ、孫秋生造像記について)、龍門石窟は鋭さがある一方で、同じ時代に刻された楷書である鄭羲下碑は雰囲気が異なり、伸びやかでおおらかさがあります。
鄭羲下碑の特徴のひとつは「円筆」。点画や字形に丸みを持たせて書かれています。
楷書ですが、篆書や隷書と同じように、起筆は逆筆。穂先を隠して書く蔵鋒がポイントです。まっすぐな線ではなく、うねりがあり文字の形に変化を持たせています。ただごつごつとした岩壁を拓本にしたものをもとに伝えられているため、時折読みにくさがあります。初心者がそのまま練習するには字典などで調べる必要があるため、やや難易度が高いです。
初めて書いてみた感想として…、隷書が好きな人は書いていてとても楽しいと思います(*´▽`*)。楷書の良さを持ちつつも、デザイン的で柔らかさがあり、他の書とはまた違う魅力があります。
鄭羲下碑、私もまだ勉強不足ですが、臨書を学ぶ人は是非書いてほしい作品です。歴史を感じながら、山々の風景を想像しながら書くと、壮大な気持ちになるかもしれませんね。
◎↓手本の冊子として定評のあるのがコチラ☆法書がお手本、法書ガイドが解説本です!(→参考までに!!:二玄社「中国法書選/中国法書ガイド」【九成宮醴泉銘】の本)