書道を始めてからだいぶたちますが、これまで「篆書(てんしょ)」にはほとんど触れずにここまできてしまいました(;´∀`)。ハンコの文字として、高校の時に篆刻をやった時以来かな?筆で書いたのは、先日が初めてです。文字は大きく分けて5つの書体がありますが、篆書は最初に生まれた書体です。篆書について、もっと知りたいと思い、歴史や特徴などを詳しくまとめました☆知ると結構奥深い実に興味深い書体でしたので、紹介したいと思います!

五書体で一番古く、変貌を遂げた字 ハンコなどで現在も使われています

書体は、篆書(てんしょ)、隷書楷書行書草書があります。一般的に使われるのは楷書と行書。草書や隷書はお店の看板などに使われています。

高校教科書「書道Ⅱ」より☆←篆書について詳しく載っていて、とても勉強になります!!

篆書は現代人が書くことはほぼありませんが、隷書は最も古い書体、文字の始まりや土台になっている大切なもの。印鑑やパスポートの題字として使われているのには、そんな意味合いがあるからかもしれませんね。

パスポートの題字は篆書!!意外と身近なところに篆書がありました(^^)

篆書は、3300年前に登場してから千数百年もの長い間に少しずつ変わっていった書体です。ただ一般的に篆書というと、標準書体として初めて定められた「小篆(しょうてん)」をイメージすることが多く、これが篆書として最も典型的な形と言われます。小篆の代表作は「泰山刻石(たいざんこくせき)」です。少し時代をさかのぼって、「石鼓文(せっこぶん)」で知られる「大篆(だいてん)」も有名です。書道で練習する古典はこの二つが多いのですが、厳密に言うと、篆書はもっともっと歴史がある書体です。駆け足になりますが、下記に簡単に歴史の流れを記しておこうと思います(^^)

(左)「書道Ⅰ」より「泰山刻石」と、(右)「書道Ⅱ」より「石鼓文」
【1】獣骨に刻された「甲骨文」がはじまり

甲骨文はおよそ3300年前に占いのための文字を記したものです。貞人(ていじん)という占い師的な人が、卜辞(ぼくじ)をいって、甲骨に文字を刻して焼き、ヒビの出方で吉凶を占っていたそう。この文字が発見されたのは1899年。「竜骨はマラリアに効く」と言われていた当時、竜骨(亀の甲や牛の肩甲骨)をよく見たら文字が書かれていて、甲骨文の存在が明らかになりました。甲骨文の特徴は、まっすぐで、切れ味のある鋭い線。絵のように見える文字もあります。

【2】青銅器が作り始められた殷時代、盛んに大きく作られるようになった周時代

中国の古代文明を代表すると言われる青銅器は、銅と錫の合金で作られた器です。殷の初期に誕生した青銅器は、食器として用いられつつも、卜辞(ぼくじ)の代わりに宗教的な儀式にも用いられるようになりました。←礼器といいます。 青銅器には、金文(きんぶん)という銘文が刻まれ、殷時代から周時代になり青銅器が大きくなると、金文も長文化。政治文字としてや、辞令やほうび、戦いの成果をたたえるものや祖先の功業をしるす、といった内容に変わっていきました。
◎【時代】
前1700~前1050年頃…殷時代
前1050年頃~前770年頃…西周時代
前770年~前403年…東周時代前半=春秋時代
前403年~前221年…東周時代後半=戦国時代

「書道Ⅰ・Ⅱ」の書道史年表よりお借りしました☆

■大盂鼎(だいうてい) ↑この写真の真ん中!西周初期の代表的な青銅器です。下に足の付いた形の、下から火を焚いて食材を温める「鼎(てい)」は、青銅器の食器として定番でした。この鼎(てい)は、重さ150キロ以上あったそうです(重すぎる!)。文字は曲線が多く、ゆるさとあたたかみがあります。

私がやっている臨書部で初めて書いた大盂鼎。篆書初めて書いた…!

■王孫遺者鐘(おうそんいしゃしょう) 戦国時代に刻されました。ほっそりしていて、足が長めで装飾的。重々しさが無く、シュッとしています。
■石鼓文(せっこぶん) 戦国時代の「大篆(だいてん)」。現存している最古の石刻文字。線の太さは一定で、どっしりとしている。幾何学的な模様から、文字っぽく変わってきた印象を受けます。10個の石からなり、猟などについての詩が書かれています。

★秦時代、標準書体として初めて制定された小篆…篆書として最も学ばれる、典型的な形!

◎【時代】前221年~前202年…秦時代
秦は、7国を次々と滅ぼし、前221年に天下を統一。始皇帝の政は、各国で使われていた文字から、大篆を簡略化した小篆(しょうてん)を標準書体としました
★泰山刻石(たいざんこくせき) 始皇帝が、自らの功績をたたえた7つの刻石を各地の名山に建立。泰山刻石はその一つです。これらは全て李斯(りし)によって刻されました。文字としてバランスよく整い、堂々とした雰囲気が漂う字です。

★漢時代以降、篆書はほとんど使われなくなるが、完全に消滅はしなかった

漢時代になると、篆書よりももっと実用的な隷書が主流になり、波磔のある章草(しょうそう)も誕生。篆書は日常的に使われなくなりますが、荘重な印象を与える篆書は、ここぞという時に使われる文字に。印章(篆刻)や石碑の題字に使われるようになりました。その後、篆書が改めて注目されるようになったのは、清時代(1644~1912年)。「金石学」という金文や石碑の文字を研究する学問が発達します。そしてその清朝末期から日本人に好かれた書家として「呉昌碩(ごしょうせき)(1844~1927年)」がいます。

■臨石鼓文(りんせっこぶん) 呉昌碩(ごしょうせき)が書いた石鼓文の臨書。筆で書くためあたたかさがあり、品格がある。当時日本の高島屋百貨店も彼の作品をこぞって狙っていたとか。確かに、とても美しい篆書です(*ノωノ)

書のひみつ」(右)と、「書の黄金時代と名作手本」(左)より。臨石鼓文、さらさら書いている感じ(*^^)v

今現在、大半の人は篆書を書くことはほとんどないと思いますが、ハンコは別です。石に文字を掘る篆刻(てんこく)は、篆書なのが定番。落款として、作品を引き締めるのに、篆書は最適です!

「書道Ⅰ」より☆篆刻紹介ページにも呉昌碩のハンコが載ってましたよ♪

●篆書の特徴 線にあえて変化を付けず、ゆったりと書く

最後に、篆書の特徴だけまとめておきます。まだ私も練習中なので、のちに気づいたことなどを追記しておきますね☆隷書に似ていますが、波磔はなく、均整のとれた字です。払いが無いのでスピードは感じず、少し丸みを帯びていてあたたかさがあります。
・縦長の字形、左右相称
・起筆で穂先を包み込むように書く…逆筆(ぎゃくひつ)、蔵鋒(ぞうほう)
・穂先は線の中心をとおる…中鋒(ちゅうほう)
・抑揚をつけずに、線の太さは一定、
・横画は水平、縦画は垂直

篆書の学習、書道をやってるとちょっと後回しになりがちですが、一番古い書体を学び、古来に想いをはせながら書くのもとても楽しそうです(*‘∀‘)。篆書を少し書いてみて思うことは、まずは基本の楷書と行書を学び、隷書を経て篆書にたどり着くのが書きやすいかも。今回はさらっと色々各古典に触れましたが、篆書の練習を重ねたら、各古典についても詳しく紹介できればいいなと思います( *´艸`)。

◎私が今回参考にさせてもらった書籍の一部です。篆書初心者の私ですが、とても理解が深まりました◎
■高校の教科書♪Ⅱには篆書も詳しく載っています!

■篆書の誕生について本当によく分かります!写真も多い~♪

■呉昌碩についても載ってました!このシリーズ、本当に好き…!

■こちらも呉昌碩載ってましたよ。読み物としても超おススメの本☆