書道初心者の母にペン字を教えているのですが、「行書が一番簡単だから行書書きたい」といつも言われます(;^_^A。確かに一理あると思いますし、私も自信が無い時はついつい行書に逃げてしまいます。ただ行書は簡単な字体、というのは語弊があると思うので、ここではそもそも行書とは何か、特徴やコツなどをまとめたいと思います◎
隷書の点画を省略したのが「行書」 行書の特徴とポイント
漢字には5つの書体があります。楷書、行書、草書、隷書(れいしょ)、篆書(てんしょ)です。
この中で一番最初に生まれたのが篆書。甲骨文に書かれていた最古の文字もこれで、記号みたいな漢字です。そこから秦・漢時代に発達したのが隷書。ハンコなどにも使われている字です。
そして隷書を経て3つの書体が生まれます。行書と草書、そして少し後に楷書です。私たちが基本の字として習うのは楷書で、一番標準の書体です。そして今回のテーマとなる行書。隷書の点画を省略して、連続してできた書体です。正しい行書が書けない人でも、行書は読み取ることができます。最後は草書。これも隷書の点画を簡略化したものになりますが、読めないことが多く、現在は一般的には古い看板などに使われたり書の創作で使われたりする書体です。
行書の特徴について、高校の教科書「書道Ⅰ」には5つ書かれていました。
1、点画や字形が曲線的になる
2、点画が連続することがある
3、点画を省略することがある
4、点画が変化することがある
5、筆順が変わることがある
ただこれは書いてみて実感しないと分かりにくいかもしれません(;^_^A
これは同じく「書道Ⅰ」」に載っていた楷書と行書の書き分けの例です↓。「広」「が」「夢」は分かりやすいですね。「る」は全く同じように見えますが、厳密にいうと違います(もっと分かりやすく書きわけたらいいのに(;’∀’))。横線一本でも、縦線一本でも、カーブの箇所でも、楷書と行書はきちんと書きわけるのが正しい書き方です。楷書の入りは鋭く、曲がる箇所は一度きちっと止まる、最後まで力は抜かない。行書は単体ではなく前の字と次の字のつながりを持つこと。「る」の次の「夢」に向けて、少しぐらい線が繋がっても良い。行書は「速書き」が基本なので、いちいち止まらずに、全てに「流れ」があることを意識して書きます。
行書は、「楷書に近い行書」と「草書に近い行書」があります。楷書に近いものは、ほぼ楷書です(笑)。↑上記は「る」で分かるように、楷書に近い行書ですね。行書に慣れない人は「崩すと上手に見える」と思いがちで、ついつい崩そうとするのですが、無理に崩さない方が良いです!その間違った崩しがクセになってしまって、意識しなくてもそう書いてしまう「クセ字」になってしまいます。「草書に近い行書」よりも、最初は「楷書に近い行書」に慣れることが、上手な行書を書く秘訣だと思います。
結局のところ、簡単だと思われている行書もきちんと知識を持って書かないと、行書を書ける人から見たらすぐに下手だとバレます(^▽^;)簡単に行書を身につけようと思わずに、何事も練習あるのみ、ですね。
私自身、現在は臨書を学んでいるので、少しだけ臨書の行書の話もさせてください☆
私が高校時代に使っていた教科書には、「究極の行書」「書の最高傑作」として、王義之の「蘭亭序」がとじ込み式になっていました。今でもこれを超える行書は無いとも言われているので、行書を学びたい人はチェックすると良いかも◎
私はこの春から臨書部で学んでいて、今年の行書の古典作品は王義之の集王聖教序なのです。蘭亭序と違って、こちらは「集字(かきあつめた字)」となるの統一感はないと言われているのですが、現代の私たちが見ても美しいと思える字。を、目指して書いてます。
余談のようになりますが、筆ではなくペンや硬筆で行書を書く場合も同じようなことが言えます。筆脈を考え過ぎなくていいので、最初はペンや鉛筆の方が書きやすいかも。ただ字を流れるように書くことを意識するのは同じで、間違った崩しをするのであれば崩しすぎない方が美しく書けます。↓こちらはペン字ですが(左が手本、右が書いたもの)、限りなく楷書に近い行書。
こちらは手紙に使われるような草書に使われる行書。ペンは間違ったら消せませんし、後は確実に「慣れ」です!!!
話の方向性が少しぶれてしまいましたが、原則として、お手本があるのであればまずはよく観察すること。それから「やわらかく」「丸みを帯びて」「前後の文字を意識して」書くと良いと思います。私も行書は大好きです。文字の形を覚えればとても楽しく書ける書体だと思いますよ(*ノωノ)
◎↓行書の最高峰「蘭亭序」が学べる冊子がありましたので、載せておきますね◎
◎↓こちらは生活に使われる行書がまとめられている本。ペン字などをされる方はこっちも良いかも◎